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事の起こり

これが事の発端となった秋月の550円の万力の広告です
この広告へのリンクはこちら、別窓で開きます)。
長年、信越(現秋月)ウォッチャーを続けている筆者は「あれっ」と思いました。

「これって、確か近所の百円ショップで売っている品ではないだろうか?」

もしそれが真実なら、信越(現秋月)始まって以来の大事件です。
各種パーツは勿論、工具や測定機器等も信じられないほど良心的な価格で提供している同店が百円ショップ品を550円で売るなんてありえないからです。

誤解無き様に先に言っておきますが、
秋月のバイスはお買い得です。電子工作をなさる方にお奨めしたい品です。
(他店では数割、あるいはそれ以上高く売っているところもあります)
また、百円ショップの品とは確かにソックリですが「モノが違う」のです。

これは、「信越(現秋月)ファン」として黙ってはいられません。
徹底的に差異を調べる決心をしました。

購入する

以下が自分で実際に確認した結果です。
まずは両方を購入する。電車賃も含めると2000円程の出費。

百円ショップの品(以下「百均品」画像左)はビニールの袋に収まっており厚紙のタグがついています。秋月の品(以下「秋月品」画像右)は紙製の箱に収まっています。

梱包方法自体はそれほど差はありません。「箱入り」と「透明袋」入りのどちらを希望するかは好みの問題だと思います。

しかし、印刷されている文面を良く読むと様々な事が判ってきました。明らかに「百均品」は「秋月品」の模造品の様に思えるのです。

パッケージにある文言の比較結果

商品名 ミニバイス

英文表記では「Mini-Vise」と「MINI VISE]。 これは偶然の一致?

製造元など

百均品:Made in China。大創造産業のために製造(product for DAISO JAPAN)とあります。(要するにダイソーブランドです)
秋月品:MADE IN TAIWAN。日本国内では太洋電機産業株式会社(ハンダゴテの「goot」の会社です)が販売しています。

使用方法

【左】百均品
【右】秋月品

挿絵が若干似ているが、これは扱っている物がほぼ同じ品なので当然のことと思います。
文章は全くの別物、百均品の方は英文が併記されています。

注意書き

【左】百均品
【右】秋月品

これも内容が全く異なります。箇条書きの記号に黒丸を使用している点は同じですが、注意書きに黒丸は良く使われるので偶然と思われます。尚、画像では省略していますが、百均品の方は和文の下に英文が併記されています。

本体の比較

いよいよ本体の比較です。赤が百均品、青が秋月品です。外観は下の写真に示す様にソックリです。
写真では判りませんが、最初に両者を手にしたときに比較したとき明らかな重さの違いを感じました。そこで両者の重量を測定してみた所、某国産は約75gで国産は約115gでした。明らかに何かが異なる様です。


外観からは何が異なるのか判らないので分解してみました。



止めピンの有無

秋月品の方は吸盤操作用のL型金具が抜けないように止めピンが使われていました。L字金具自体は両端に樹脂製のキャップがありその分太くなっているため簡単に抜けはしないのですが、やはり止めピンがないとぐらつきます。百均品は「無くとも何とかなる」ので省略したと思われます。

E型止め輪のサイズ

画像下に写っている「C型」の金属板です。「E型止め輪」が正式名称の様です。心棒(画像中央のネジ)が抜けないようにする目的があるので前述の留めピンの様に省略はできない構造です。
見てお判りの様に、心棒自体の太さは同じなのに止め輪のサイズが異なります。これもコストダウンの為なのかどうかは不明ですが、某国産の方が小さいのは事実です。残念ながら材質の違いまでは判りませんでした。

補強版の厚さ

両者ともに万力の挟む部分は金属板で補強されていますが、厚さが違います。正確な厚さは判りませんが、見た感じでは国産が0.4mm厚くらいで某国産はその半分の0.2mm厚くらいに見えます。

これは明らかなコストダウン目的だと思われます。


プラスチック本体

プラスチック自体の材質の違いはわかりません。同じ色があれば比較しやすかったのでしょうが残念ながらそれはありませんでした。形状は素人目には大きな差異は無い様に見えまが、金型は明らかに一方が他方を参考にして作られた物と思われます。


ゴム板(固定用の吸盤)

明らかに違います。材質も組成までは判りませんが触感が全く違います。国産(画像右)の方は画像の状態で机の上に置くだけでも吸着力が発生しますが、某国産は「乾いた感じ」が強く、強く押さないと吸着力は発生しません。

形状も国産はプラスチック部分を外側から囲むような部分があるのに対し、某国産にはそれが無く、全体的に単純な直線状の形状の型で作られていることがわかります。

決定的な差異

なんと、某国産は心棒がプラ

万力を締める手回しのネジです。正式名称が不明なのでここでは仮に「心棒」と呼ばせていただきます。

分解した瞬間、この心棒があまりにも軽いのでに気付きましたいた。なんと某国産は心棒がプラスチックなのです。しかもわざわざメッキまでして金属風に見せかけています。これには驚きました。

これが全てです。これ以上は何も言えません。

材質表記に関して

某国産の方にこんな表記がありました。
「ハンドル:鉄」とあります。

一瞬、「これは!」と思いましたが、ハンドルがこの「心棒」の事を示すとはどこにも書いておりません。
しかも、この製品にはハンドルと呼べるものとして「吸盤の脱着レバー」もあります。しかもこの脱着レバーは確かに「鉄」で出来ています。


おわりに

このバイスに限らず、国内の製品をコピーしたと思われる商品は山の様に売られているのが現状です。
それらが法的に問題があるのかどうかは、筆者は法律の専門家ではないのでわかりません。
法的に問題が無いのならば、500円の品ではなく、多少質は落ちても100円の品を買うという選択も正しいとも思います。

「肉や魚をどのスーパーで買うかという問題と同じだ」と言う方もおります。味を気にしない消費者は当然安い方の肉や魚を買うでしょうし、味が判る消費者は味と価格のバランス常に考えながら購入先を選ぶという事です。

但し法的に問題があるならば、売ることは勿論、それを買うことも犯罪であり絶対にすべきでは無いと思います。

ちなみに、筆者自身も「百円ショップ」にはよく行きます。色々な商品を見ているだけで、新たな電子工作のアイデアが突然浮かぶ事も多々あります。しかし、百円ショップでは、ニッパやデザインカッターなどの「刃物」と、MONOと書かれている「ケシゴム」と、この「万力」だけは絶対に買いません。理由は皆様のご想像にお任せします。

百均品のその後


ちなみに百均品は「液晶ディスプレイの上に物を置く台」として活躍中です。
(画像のフィギアは幼稚園児からお借りした「プリキュアエース」です)
(2013年8月)

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