ハード設計(論理回路設計)超入門

さて、どこから話しましょうか?

コンピュータの話を始める時に、いつも迷うのが「さてどこから話そうか?」です。
夏休みの自由研究に困っている小学生に話す場合と、未来の電子計算機理論を担う学生さん達に話すのでは「何から話すべきか」は当然異なるからです。

しかし残念ながら私は、今これをお読みになっている方がどんな方なのか判りません。
ですからここでは、誠に勝手ながら「豆電球」の話から始めたいと思います。

豆電球の回路

まずは豆電球の回路から

画像1
豆電球とスイッチと電池

画像1はスイッチを左に倒すと豆電球が光り、スイッチを右に倒すと豆電球が消える「装置」です。

これを見て「あ、これならわかる」という方は、この項は卒業です。さっさと次項(豆電球の回路と方位磁石)に進んでください。

何か釈然としない方へ

豆電球が光るのは何となくわかるけど、もう少しだけ基本的な事を知りたいという方のために、補足ページを用意しています。
不安な方はそちら(本頁左サイドのツリーメニューからも入れます)を参照してください。


豆電球の回路と方位磁石

次は方位磁石です

画像2
方位磁石OFF画像2はは、画像1の「豆電球の回路」の銅線の下に方位磁石を置いただけの回路です。

(これを御覧になっただけで何を言いたいのかが分かる方は、この項は読み飛ばして下さい)


画像3
方位磁石ON

画像3はは豆電球が点灯している状態を撮影したものです。
豆電球が点灯していない状態を撮影した画像2と方位磁石の針の向きが微妙に異なるのがお判りでしょうか?

電子が動くとその経路だけではなく、その周囲にも様々な影響を与えるのです。方位磁石が動いたのも、その影響です

ここでは「電子が動くと方位磁石も動く」として次に進みます。「何故動くのか」とか「どう動くのか」がどうしても気になる方は、補足ページを御覧ください。(この補足ページは工事中)


方位磁石をスイッチにする


図式化図式化

図1は上記の写真をマンガ化したものです。方位磁石は実際には銅線の真下に位置しますが、見づらいので、少し離れた位置に針(磁針)のみを描いています。

方位磁石の針は通常、南北方向を指しますが、ここではバネを用いて通常の状態(周囲に電気が流れていない状態)では東西南北とは関係なく特定の方向を示す様に細工がしてあるものとします。

図1
豆電球と方位磁石

方位磁石に銅線を配置する

次次に磁針に銅線を接続し(図2のC)、磁針の周囲に2本の銅線を配置します(図2のAとB)。こうすると通常の状態ではバネの力でBとCが接触します。

下図ではバネの表記は省略しています。またスイッチも2本の銅線(XとY)が接触しているか否かで表記しています。

図2
豆電球と方位磁石

この状態でXとYを接続すると、回路の中を移動する電子が磁針の向きを変化させます。結果、AとCが接触した状態になります(図3)。

図3
豆電球と方位磁石

必要な基本知識は以上です

論論理回路の理解に基本的な知識は以上です。

「導線を接続したり離したりすると、離れた所の導線が接続されたり離れたりする」たったこれだけなんです。

あとは、この知識と実際の技術を頭の中で結び付けるための日本語を覚えるだけです。

論理回路の勉強に必要な「4つの日本語」

「入力」と「出力」

論理回路の勉強に論理回路の勉強に最低限必要な言葉は4つだけです。まずはそのうちの2つ、「入力」と「出力」を解説します。

電子回路では変化を与える方を「入力」、変化が生じる方を「出力」と言います。但し常に電池の「+」や「−」に接続されている所は「出力」でも「入力」でもないとする決まりがあります。

図4
入力と出力図4ははXが入力で、A〜Cが出力です。
Yは電池の+に直接接続されていますので、入力ではありません。


図5はは図4に幾つかの接続を書き加えたものです。

図5
入力と出力

Aが電池の「−」に、Bが電池の「+」に接続されています。
ですから図5は、Xだけが入力で、Cだけが出力となります。


図が複雑になってきたので、ちょっとしたテクニックを使います。
図6は、図5の電球を黒枠の白丸に、電池のマイナスへ接続される銅線を青丸、同じく電池のプラスへ接続される銅線を赤丸に置き換えた図です。

図6
入力と出力

このようなテクニックを使うと、複雑な配線の接続関係が一目で判るようになります。


図5図6同じ回路を表していることを、もう一度よく確認してください。
なお、少し太く表示されている導線部分は、そこが方位磁石の真上に位置することを表しています。

HとL

残る2つの言葉は「H」と「L」です。H(エイチ、またはエッチ)はHigh(ハイ)の頭文字で、L(エル)はLow(ロー、またがロウ)の頭文字です。但し英単語の意味を気にする必要はありません。ここでは「H」も「L」も単なる記号と考えて構いません。

「H」と「L」は前述の「入力」と「出力」という言葉と一緒に使われます。
具体的に言うとこうなります。

  • 入力をHにする 
  • 入力をLにする
  • 出力がHになる
  • 出力がLになる

一見、暗号の様ですが御安心下さい。解読は簡単です。

  • 入力をHにする ← これは「入力を電池の+に接続する」という意味
  • 入力をLにする ← これは「入力を電池の−に接続する」という意味
  • 出力がHになる ← これは「出力が電池の+に接続される」という意味
  • 出力がLになる ← これは「出力が電池の−に接続される」という意味

この言葉を前述の図6を使って確認します。

ここが本章の一番大事な所です。ここまでを「なんとなく分かった」からと進んでしまうと、 結局何も判らずに終わります。少しでも解らない点があれば、もう一度本頁を最初から読み直す事をお勧めします。

図6再掲
入力と出力

左図は図6の再掲です。
入力XがHでもLでもない状態(どこにも接続されていない状態)です。
この状態では、出力CはHになっています。(赤丸、つまり電池の+と繋がっている状態)



図7
入力と出力

図7は入力XをLにした状態です(青丸は電池の−を意味します)。
豆電豆電球は両端共に青丸なので点灯せず、方位磁石はそのままです。従って出力CもHのままです。



図8
入力と出力

図8は入力XをHにしたところです。(赤丸は電池の+を意味します)
豆電球にが点灯し、方位磁石が角度を変えました。これにより出力CはLに変化します。


ここまここまでの話を表にまとめてみる

表1図6の入力と出力の関係を表にしたものです。この表には「豆電球」も「方位磁石」も「電池」も現れません。ただ単に「入力」、「出力」、「H」、「L」という4つの言葉が現れるだけです。
しかし、この表には、ここまでの話の全てが濃縮されているのです。

図6入力の状態 図6の出力の状態
Lにする Hになる
Hにする Lになる
HにもLにもしない Hになる
 

似たような表を学校の教科書等で見たことがある方も多いかと思います。
でも大切なのは、試験で良い成績を取るためにこの表を丸暗記する事ではなく、この表を見て、図6や更には図5画像3を頭に描ける様になることです。
それができて、初めて「論理回路の勉強」のスタートラインに立つことができるのです。

さて、ここからが本当の「論理回路の勉強」であり、「コンピュータの勉強」であり、そして更にその先にある「ソフトウエアの勉強」になります。

(次章に続く)